コロナ禍の現在、3密を避け手軽に移動できる手段として電動キックボードが注目を集めています。ですが電動キックボードを購入すると数万円~数10万円がかかってします。
そんな中、110円から利用可能で気軽に電動キックボードを使える「LUUP」というシェアサービスがあったので体験してきました。
実際に電動キックボードのシェアサービスを利用してみて良かった点、悪かった点、その他感じたことなどをまとめています。
実際に簡単に利用でき、近距離の移動には非常に便利でした。
ただ個人的には電動キックボードのシェアサービス普及の前に、自転車のルールの浸透が先かなという印象でした。
- 電動キックボードのシェアサービスがどんなものか知りたい人
- 実際に使ってみた感想を知りたい人
Contents
シェアリングサービス「LUUP」の概要
「LUUP」は株式会社Luupが展開する、小型電動アシスト自転車、電動キックボードのシェアリングサービスです。
同社は2020年5月に小型電動アシスト自転車を用いたシェアサービスを開始。2021年4月から東京都内で、2021年6月からは大阪キタ・ミナミで電動キックボードのシェアサービスを開始しています。
2021年7月現在、東京の渋谷・新宿・六本木に約300ヶ所、大阪のキタ・ミナミのエリアに約100ヶ所のポートがあり、そのうち電動キックボードは東京の約200ポート、大阪の7ポートで利用可能となっています。
現在、電動キックボードは実証実験特別価格として、電動アシスト自転車と同じ料金で利用可能となっています。
LUUPの料金システム(電動アシスト自転車、電動キックボード)
- 初乗り10分間110円(税込)
- 10分以降は1分あたり16.5円(税込)
LUUPの電動キックボードと一般的な電動キックボードの違い
LUUPの電動キックボードは道路交通法上は「小型特殊自動車」に分類されます。フォークリフトや農耕トラクターなどがこの小型特殊自動車に含まれます。
現在、この種の電動キックボードは公道走行の実証実験を行っている段階で、制限速度が時速15キロまでと抑えられている一方、ヘルメットの着用が任意、自転車道や自転車レーンの走行が可能、一方通行の逆走が可能など、原動機付自転車(原付)に比べると一部規制が緩和されています。
一方で一般的な電動キックボードのほとんどは、道路交通法上「原動機付自転車(原付)」に分類されます。
このように小型特殊自動車に分類されるLUUPの電動キックボードは、原付に分類される一般的な電動キックボードや、軽車両に分類される自転車とは道路交通法上の区分が異なります。
表 LUUPの電動キックボードと一般的な電動キックボード、自転車の比較
LUUPの電動キックボード | 一般的な電動キックボード | 自転車 | |
道交法上の区分 | 小型特殊自動車 | 原動機付自転車 | 軽車両 |
制限速度 | 15km/h以下 | 30km/h以下 | 自動車と同じ |
ヘルメット着用 | 任意 | 義務 | 任意 |
保安器 (ナンバープレート、ミラーなど) |
必要 | 必要 | 不要 |
歩道走行 | 不可 | 不可 | 可(徐行必要) |
自転車道、自転車レーン | 走行可 | 走行不可 | 走行可 |
免許 | 必要 (普通免許や普通二輪免許」など) |
必要 (原動機付自転車) |
不要 |
このようにLUUPの電動キックボード(小型特殊自動車)は原付とも自転車ともルールが異なります。乗るときは注意しましょう。
余談ですが、街中でヘルメットを被らず、ナンバープレートなども付けず、歩道を爆走するフル電動自転車や電動キックボードをよく見かけます。
あれは完っ全に違法です!
フル電動自転車や電動キックボードはネットで数クリックするだけで簡単に購入できてしまいます。そのため普通の自転車感覚で乗ってしまう人が多いのでしょう。
ですが道路交通法上は原付と同じ。歩道を走ることはできませんし、ヘルメットの着用やナンバープレートの装着が義務付けられています。
実際に事故も起きており、警察は取り締まりを強化しています。
安易な気持ちで乗らないように注意しましょう。
LUUPの利用方法
LUUPを利用するには事前に「運転免許証の登録」と「道路交通法テストの合格」が必要です。
また決済用にクレジットカードの登録も必要です。
これらの事前準備を済ませておけば、あとは電動キックボードがあるポートに行き、LUUPアプリでQRコードをスキャンするだけで利用を開始することができます。
目的地のポートに到着したらアプリ上で「ライド終了」をタップ。ポートに停めた電動キックボードの写真を撮影し、決済を済ませれば完了です。
LUUPの電動キックボードを使ってみて良かった点
実際にLUUPの電動キックボードを使ってみて気づいた良かった点をまとめます。
利用時の手続きが簡単
事前にLUUPに登録さえしておけば、借りるときはスマホひとつでパッと借りられるのが便利ですね。
スマホ以外に小銭もカードも必要ありません。
スマホホルダーが付いている
全台では無いのかもしれませんが、私が利用した電動キックボードにはスマホホルダーが装備されていました。
ホルダーにスマホを付けておけばナビとして利用でき、道に迷う心配もありません。
アプリ画面上に地図やポートの場所も表示されます。
出発地に戻ってくる必要がない
電動キックボードが設置されているポートは電動アシスト自転車に比べると少ないですが、借りた場所に戻ってこなくても良いというのは便利です。
例えばお酒を飲みに行くとき、片道だけは電動キックボードでお店の近くのポートまで行き、帰りは電車などを利用する、といった使い方もできます。
特に大阪では電動キックボードが置いてあるポートが少ない(7ヶ所)ですが、どこのポートでも返却はできます(サポートセンターにて確認済)。
今後は電動キックボードが設置されているポートも増えていくでしょうから、どんどん便利になっていくでしょう。
服装を気にせず気軽に乗れる
自転車と異なり、電動キックボードは車輪も小さく、ペダルもありません。
そのため、女性だとスカートでも車輪やペダルへの巻き込みを気にする必要がありません。またペダルを踏む必要が無いため、ストレッチが効かないスーツでも乗りやすいです。
一応ルール上はヘルメット無しでもOKとなっているため、ヘアスタイルを気にする方でも利用しやすいです。
ただし車道を走り、車と接触する可能性もありますので、ヘルメットは被ったほうが良いです。
盗難を心配する必要がない
電動キックボードは比較的コンパクトなため、持っていこうと思えば簡単に持っていけてしまいます。そのため自分で電動キックボードを購入すると盗難が心配です。
シェアサービスの場合、利用が終わればすぐに返却するため、盗難の心配が少ないというのが良いですね。
利用料金には保険も含まれている
LUUPの電動キックボードの利用料金には傷害保険や賠償責任保険の保険料も含まれています。
【傷害保険】
- 死亡・後遺障害:200万円
- 入院保険金日額(※1):7,500円
※1:事故が発生した日から180日間 - 通院保険金日額(※2):3,500円
※2:事故が発生した日から180日以内の90日間
【賠償責任保険】
<LUUPサイクル>
- 対人・対物共通賠償責任補償:最高1億円
<電動キックボード>
- 対人・対物共通賠償責任補償:無制限
https://luup.zendesk.com/hc/ja/articles/360051962573-保険について
自分で自転車や電動キックボードを購入する場合は別途保険に入る必要があります。これらの保険が付いているというのは、万が一事故を起こした時でも安心ですね。
ちなみにですが、自分の自転車や電動キックボードに乗る場合は、個人賠償責任保険には絶対入っておいたほうが良いですよ。その理由については下記の記事で詳しく説明しています。
電動キックボードのシェアサービスのイマイチな点
気軽に乗れて便利な電動キックボードですが、イマイチな点も多く感じました。
交通ルールがややこしい
先に説明した通り、LUUPの電動キックボードは、道交法上「小型特殊自動車」に分類されます。原付に近いルールが適用されますが、原付に比べると一部ルールが緩和されています。
とは言え自転車感覚で乗りたい人は、以下の点で混乱しやすいかもしれません。
運転免許が必要
LUUPの電動キックボードに乗るときは、小型特殊自動車を運転するために必要な免許証を携帯する必要があります。
必要な免許の種類は「普通免許」や「普通二輪免許」などです。「原動機付自転車」の免許では運転できません。
自転車に乗るときに免許証を携帯しない人も多いでしょうから、電動キックボードを利用する場合は免許証を忘れないようにご注意ください。
歩道走行禁止
自転車と異なり、歩道の走行は禁止されています。日頃自転車では歩道しか走っていない人は、車道を走るのは怖いかもしれませんね。
ただし自転車道や普通自転車専用通行帯(自転車レーン)は走行できます。
また「自転車を除く」と補助標識のある一方通行路は、自転車と同様に逆走ができます。
二段階右折禁止
原付では認められている「二段階右折」が、小型特殊自動車では禁止されています。右折するときは「小回り右折」という、車と同じ右折方法で右折する必要があります。
しかしLUUPの電動キックボードは時速15キロしか出ません。そのため交通量が多い道路では車の流れに乗れず、レーンの右側に寄ったり、右折レーンに移るのはほぼ不可能です。
押し歩きは認められていますので、右折したい場合は押して歩道に上がり、横断歩道を渡りましょう。
走行禁止道路がある
原則車道を走る電動キックボードですが、一部走行禁止道路があります。
大阪では御堂筋線、谷町線などが走行禁止となっています。
どこが走行禁止なのかはLUUPのホームページで確認できます。またLUUPに乗車中でも、アプリ上で確認できます。
私は大阪駅から難波駅まで利用しましたが、近くの堺筋も四つ橋筋も北向きの一方通行のため、南向きである御堂筋が走行できないのは結構辛かったです。
時速15キロは遅過ぎる
LUUPの電動キックボードの制限速度は時速15キロとなっています。
実際にフルアクセルにしても時速15キロまでしか出ないようになっています。
ただ実際走ってみるとわかりますが、時速15キロは相当遅く感じます。日頃ロードバイクで時速30~40キロで走っている身としては、遅すぎて止まってしまうんじゃないかと思うレベルです。
そのため車道では車の流れに乗ることができません。交差点では左折車からの巻き込みに注意する必要があります。
また大きな交差点で黄色信号になるギリギリ前で進入しても、交差する道路の信号が青になるまでに交差点を抜けきれない場合が何度かありました。
大きな交差点で信号が変わりそうな時は、渡り切れるかしっかり確認したほうが良いです。
立ちっぱなしなので、長時間の利用には向かない
自転車と違い、電動キックボードでの移動中は常に立ちっぱなしの状態になります。そのため長時間乗ると疲れたり、足が痛くなりやすいです。
そのため30分以上乗るのはあまり向きませんね。
また時速15キロしか出ないため、移動できる距離はせいぜい数キロです。それ以上離れた場所に行く場合は時間もかかるため、電車やバスを利用したほうが良いでしょう。
アクセルボタンは押しっぱなしで指が痛い
時速15キロしか出ないので、走行中は基本的にアクセルボタンは押しっぱなしです。そのため指が痛くなりました。
もう少し、押しやすい構造になっていると良いと思いました。
料金はそこそこかかる
電動キックボードの利用料金は最初10分間が110円、それ以降は1分あたり16.5円となっています。
つまり20分間使うと275円、30分間使うと440円になります。そこそこの料金がかかりますね。
LUUPが利用できる場所は信号が多い都心部のため、実際に移動できるのは20分で2~3km程度でしょう。電車やバスに比べると、移動距離の割には料金がかかります。
試しに大阪駅から難波駅まで約5キロを利用しましたが、御堂筋が使えず少し遠回りした影響もあり、約55分、852円もかかってしまいました。
最寄り駅までは電車で行き、そこから1~2キロだけは電動キックボードを利用する、といった使い方が良さそうですね。
荷物を入れるカゴが無い
LUUPの電動キックボードには荷物を入れるカゴや収納場所がありません。自転車の感覚で乗ると、荷物の置き場所に困るかもしれません。
服装を気にせず乗れるという点はメリットですが、ハンドバッグなどは向きませんね。
バッグをハンドルにかけたり足元に置くのは事故の原因になるのでやめましょう。
その他、電動キックボードのシェアサービスを利用した感想
その他、LUUPの電動キックボードを実際に利用してみて感じたことをまとめます。
電動キックボードの操作はすぐに慣れる
走り出すときは足で地面を蹴って初速をつけ、アクセルレバーを押すと加速します。その操作方法は最初は手間取りますが、10分もすればすぐに慣れます。
走行中やカーブ時の不安定さはあまり感じませんでした。ただ重心が高いので、段差などで躓いたときは思いっきり転けそうです。
そのためヘルメットは被っておいたほうが良いです。
ウィンカーは戻し忘れやすい
LUUPの電動キックボードにはウィンカーが装備されていますが、ウィンカーを出しても車や原付のようにカチカチという音は鳴りません。またハンドルを戻してもウィンカーは解除されません。
右左折をした後はウィンカーの戻し忘れに気をつけましょう。
電動キックボードの普及以前に、自転車のルールの周知が必要
電動キックボードや電動アシスト自転車のシェアサービスの普及によって、近距離を手軽に移動できる手段が増えるのは便利で良いことです。
ただしこれらの乗り物以前に、車道の逆走禁止、歩道の徐行義務など、自転車の基本的なルールすら知らない人が多いと感じます。
そんな状況で、新たなカテゴリーである「小型特殊自動車」の電動キックボードを広めても、どれだけの人がルールをきちんと守れるでしょうか?
ルールを知らないまま走る人が増えれば危険です。
電動キックボードのシェアサービスの普及の前に、もっと自転車のルールの周知が先ではないかと思いました。
まとめ
LUUPの電動キックボードのシェアサービスの概要、利用してみた体験談、感想についてご紹介しました。
電動キックボードのシェアサービスは気軽に移動できて非常に便利です。
しかしルールがやや難しいです。電動キックボードの普及以前に、自転車のルールが正しく理解されることが先決ではないかと感じました。